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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「玉井君」酔って来た副島は、いくらか、からかい気味の語調で、「君も、ひとつ、町会議員にならんかい?」

「とんでもない。わたしらのようなゴンゾが、そんなこと、考えただけでも罰があたりますよ」

「罰? なんの罰が? たれが罰をあてるんだね? 僕はいつも考えるんだよ。この若松は石炭の街だから、石炭仲仕の代表が、町会に出る必要がある。聯合組の重役では、田中光徳親分などが出たい意向があるんだが、ほんとに、石炭の中で、まっ黒になって働いとる君たちの中から、誰か出にゃいかん。それには君が持ってこいだよ」

「いやです」

高台になっているので、窓から、若松の街が一望である。金五郎はコップを口につけ、苦いビールの泡を噛みながら、光の少い若松の街を、感慨をこめた眸で見おろした。

(とうとう、若松に、腰を据えることになってしまった)

運命の不可思議さを、今さらのように、考えずには居られなかった。

テーブルには幾組も客があったが、そのどれからかの声が、ふと、金五郎の耳をそば立てさせた。

「玉井の奴が、組合を作ろうたって、出来るわけがないよ。それに、うちの親分から嚇かされて、釘を刺されちょるけ、作りきりゃせん」