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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

……そないなことをいう。どっちも聞かなんだら、なぐりこみを掛けるぞと、いわんばっかりや。――仲直りの勘定も払わんといて、よう、そんな理不尽なことがいえるもんじゃ、いやはって、新さんは歯を食いしばって、泣きよった。……金さん、ほんまに、この百合香が居るばっかりに、新さんはこらえたんやで。そいで、涙をのんで、小指切って、ここんところは、一時、おさめる覚悟定めたんや」

「馬鹿な」金五郎はびっくりして、「それで、指切って出したのか?」

「すんでのところを、切らんですみました。花田準造親分が友田をおさえてくれはったらしゅうて……」

吉田磯吉が、自分は人間の反古籠をもって任じている、といった言葉を、金五郎は思いだした。友田や花田などの錚々たる子分が、反古であるわけはないが、少くとも、雑種であることは間違いないらしい。親の心、子知らず、というのであろうか。花田準造は江木弥作親分から乞いうけて貰った子分といえば、一種の外様大名だ。譜代大名である友田喜造とは、なにかと暗流を衝突させているのかも知れない。しかし、その軋轢が、はからずも、森新之助には幸したわけである。仲直り宴の経費で、倒れるかと心配していたのに、吉田磯吉が金五郎のところへ届けてくれた祝儀で、急場を凌ぐことが出来た。