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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

県会議員に推挙しようという動きもある。

こういう風になって来ても、金五郎とマンとは、口癖に、「おれたちは、石炭仲仕じゃ。裸一貫、門司、下関、戸畑、それから、若松に来てからも、石炭の中で、まっ黒になって働いたことを忘れまい」と、話しあった。現在でも、金五郎は半纏姿で、沖の現場に行くことを欠かさなかった。長男の勝則にも、「お前はゴンゾの子じゃぞ。そして、お前もゴンゾなのじゃぞ」と、機会ある毎にいましめた。その勝則は、すでに、二十五歳の逞しい青年になって、「玉井組」の半纏がけで、毎日、仕事に精出している。

そして、こういう長年月の生活の根桟に、つねに、般若の五郎の言葉が、重々しく、光りかがやいていたのであった。その五郎に、三十年ぶりで、奇妙な邂逅をしたわけである。

ただ、金五郎のへこたれたのは、彫青であった。

(五郎さんの彫青も、お京が彫ったものじゃろうか?)

そうかも知れない。しかし、全身総彫青の五郎は、左腕一本だけの金五郎のように、それを後悔し、苦しみ悩んだか、どうか?――実に、後年の金五郎にとっては、彫青は地獄に類するものといってよかった。

(いっそ、腕一本、切ってしまおうか?)