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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
――第五十八特別議会、今日召集。
――ロンドン海軍軍縮会議大詰、本日の首席全権会議で、条約草案を承認、明日いよいよ調印。
――高松宮両殿下、午後三時、横浜港より、鹿島丸にて、ヨーロッパへ御出発。
――六大学リーグ、早稲田、法政を3対0で破って、全勝。
――惨殺された男から、突然、一年目に音信。遺骨まで引き取った妻の驚き。
――浅草千束町で、旅の女、絞殺さる。
――三銭を盗む。鶴見の怪賊。
金五郎は、苦笑した。もうすこしで、「田舎のお上り市会議員殿、浅草にて、掏摸にやらる」などと、新聞に書かれるところだったのである。
(今日は、何日じゃったかな?)
世界と、日本と、浅草とに、こんなにも、いろいろな事件の重なっている偉大な日、金五郎にも忘れられない思い出が、また一つ、増えたのである。
新聞の日附を見た――昭和五年四月二十一日。
金五郎は、般若の五郎のいった言葉を思いだした。
「東京には、もっと珍しいものがありまさあ」
また、
「びっくりしないで下さいよ」
たしかに、珍しいことに出逢った。びっくりしないでは居られない。びっくりした。金五郎は、大都会の渦巻の中で、戸まどって、へまばかりやっている自分が滑稽で、哀れでならなくなって来た。