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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
中には、顔を知っている者もまじっていて、「勝則さんの祝言は、いつですか」などというので、一層、顔が赤らんだ。
雨に煙る海のうえを、渡船は若松に着いた。
マンは、三次と別れ、蛭子通りから、原田雲井の家のある浜ノ町へ曲った。
一町も行かぬうち、一軒の家の中から、
「玉井のごりょんや、寄って行かんかな?」
と、呶鳴る者があった。女の声である。
マンは、微笑して、立ち止まった。その家の方へ歩いた。そのマンの耳に、どよめきのように、猫の鳴き声が聞えて来た。
勝手を知った縁側の方に廻ると、四十匹ほどの猫の群衆の中に、「二代目ドテラ婆さん」が、胡床をかいていた。
縁に、二人の若い芸者がいる。
「どうな、うちの前を、素通りは出来まいがな?」
川野ノブは、身体をゆすって笑った。
「そうね、猫にかけちゃあ、あたしも、おノブさんには勝ちませんよ」
「あんたは猫好き、おれは猫気ちがい、狂人には、誰も勝たん。じゃが、おれは猫を好かん奴は、信用せんことにしとるばい。悪い心の奴には、猫の可愛いことがわからん」
「そんなら、あたしは信用があるのね」
「大あり、大あり。……ほうら、猫の方でも、よう知っちょる。