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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
そういって、勝則は、蝙蝠傘をたたんだ。
(どういう風に、話し出したらよかろうか?)
気が、重い。
「どうも、こうも、うちの家主と来たら、碌な奴ッちゃない」布袋のような原田雲井は、客の気持などは全然わからないので、鉈豆煙管で、キザミをふかしながら、にこにこと、楽しげな口調で、
「人権蹂躙で訴えてやろうと思うちょる。わしが家賃を払わんのも悪かばって、こっちは貧乏して、食うことがやっと、家賃まで手が廻らんとじゃ。……いや、そうじゃなか。勝則君も知っとる筈。ほんというと、家賃くらいは、どうにでもなる。まさかのときにゃ、お宅にでも駈けこめや、玉井さんが、家賃くらいのことはいつでも引きうけてくれる。銭金じゃなかとたい。庶民を苦しめる悪家主とは、徹底的に闘わにゃいかん。……馬鹿たれが。屋根の瓦を剥がしゃ、わしが困るかと思うちょる。出るかと思うちょる。ヘン、今に、向こうが吠え面かくとたい」
そういって、また、全身と、家とをゆるがせて、哄笑した。
「家主は、誰ですか?」
「森五市くさ。面からして、悪逆無道の顔しちょる。ボタ餅を地面にたたきつけて、その上を算盤で引いたような面しとって、妾は二人も囲うちょる。