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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
から、そういわれた。そのときは、そんなものかと思ったが、年月が経つうちに、人間の生活はそんな簡単なものではないということが、次第に、わかって来た。
――秘密は汚いもの、悪いものとばかりはかぎらない。立派な秘密、美しい秘密というものもある。
それを知るようになった。
お京とのことは、一言や二言では話せない。一言二言話せば、かえって、誤解される。納得の行くように、いつか話そうと思っているうちに、話しはぐれると、いよいよ、むずかしくなってしまう。
このごろでは、
(無理矢理にほじくらず、一生、そっとして、置いとく秘密があってもええではないか)
そんな風に、考えるようになっていた。
(マンの方にも、あるかも知れん?)
人間と人間とが鍔ぜりあいしながら、生きて行く世界が、誤解の上に立つ矛盾と滑稽に満ちていることは、もはや、金五郎は、いやというほど、経験して来たのである。その人間の憂鬱を、そっとして置きたい美しい秘密だけが、わずかに、支えているのではあるまいか。
「なんとか、なろうわい」
言葉に出して、呟いて、金五郎は、意味深長な微笑をただよわせた。
昔、染奴の偽手紙で、お京との仲を疑ったマンは、金五郎に暴力を加えて、広島に逃げ帰ったが、今度はほんもののお京の手紙を読んで、いかなる行動に出るか?――金五郎は、すこしおどけ