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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

「艮玉」「板桂」「明珠」「月宝」「逢春」等の文字が印刷されてある。この「チーハー」と呼ばれる富籤式の賭博は、支那から渡って来たものであるが、猛烈な勢で、若松全市に、蔓延していた。胴親から派遣される「蟻走」と称する大勢の運送屋が、午前のうちに、あらゆる方面に飛んで、「筋紙」を配り、零細の金を集めて廻る。

午後、「現場」に持ち寄られ、「蟻走」立ちあいの上、胴親の厳封した当り銭を開いて、勝負を定める。「現場」は、警察の眼をくらますため、毎日、移動される。そこへ、胴親の帳場がやって来て、金銭の分配をするのである。当りは賭金の三十倍が支払われるが、「蟻走」が手数料を取るので、結局、二十八倍。当れば小さくないので、たちまち、花柳界をも風靡したのである。

「やっぱり、「光明」に張るわ。光という字が、気に入ったよ。……豆八ッあん、はい、二円」

「ウワア、どえろう気張ったなあ」

「一か八かさ」

がやがや騒いでいると、「飛鳥」の君香が出て来た。

「困るなあ、豆八ッあん。芸者衆にバクチを奨励して歩くよって、稽古、てんから出けへん。「チーハー」で、上の空や。明日から、稽古場には来んといて」