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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

お前にも、用があるんじゃ。……さっきから聞いとったら、「チーハー」の話をしよったが、どうも、豆八は、「蟻走」をやっちょるらしいな。恰度ええ。訊きたいことがあるけ、真直に、返事せえよ。嘘をついたら、考えがある」

色の生青い優男であるが、その眼は、二枚の剃刀のように、不気味に鋭い。ひょろりと背の高いのが、一種病的な感じだ。着流しの、白縮緬帯に両手をさしこみ、武者ぶるいじみた、貧乏ゆるぎをしている。すこし、吃る。

栗田銀五、三十四歳。友田善造の息のかかった博徒である。

「なんごとでしょうか」

と、豆八も、すこし警戒する姿勢になった。

「今日の「チーハー」の宿は、どこじゃ?」

「そんなこた、知りません」

「蟻走が、知らんことがあるか」

「蟻走は蟻走でも、わたしゃ下蟻走ですけん、「現場」に立ち会うたこた、一ぺんもないです。誰か、本蟻走に訊いて下さい」

これは、とっさの嘘であった。豆八は本蟻走に昇進したばかりで、今日の「現場」が、「猫婆さん」の家であることを知っている。これから、そこへ行くところなのだ。

「そうか」と、栗田は、案外、簡単に信用して、「そんなら訊くが、「チーハー」