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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
しかし、主はそれを見せびらかしておいて、「もし、これが欲しかったら、その前に、誰それに、とり憑いて来い」と命じる。怨霊となった犬神は、目的の人間の体内へもぐりこんで、方々を肉の瘤となって移動する。その苦痛は耐えがたい。――この地方に昔から伝わっている、不気味な呪いの方法であった。
金五郎は、清七が鍵をつくってくれるのを待った。
馬鹿叮嚀に、念を入れる清七が、半紙に墨で押した鍵穴の型をもとにして、一つの鍵をこしらえあげたのは、頼んでから、一週間目も後であった。
「やっと、でけたぞな。……そら、そうと、まあだ、犬神は来んけ?」
「待っとるが、一向に来ん。呼んで来てくれんか」
その次、逢った清七は、「とうとう、犬神奴、飢え死にしてしもうたげな」と、腹をかかえて笑った。
五月に入って間もなく、兄夫婦が伊勢詣りに旅立った。このときをおいて、機会はない。
金五郎は、清七の作ってくれた合鍵を、箪笥の鍵穴にはめた。ぴったりと合った。あけてみると、紙幣、銅貨、銀貨がとりまぜて、ざくざくと入っている。七百円ほどもあった。いきなり、そのうち、二百円ほどをふところに入れた。