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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

金五郎が言葉を濁したのは、席には、民政党の連中が何人もいるからだった。

聯合組は、荷役会社として始められたものであるから、政党的には統一されていない。これまでにも、重役、小頭の中から、市会や商業会議所に出た者は多いが、民政、政友、中立、ばらばらである。このことが、聯合組内部を複雑なものにしている。

重役の牧野藤三郎は、民政党の錚々たる闘士である。豪放な気質だが、あまり上手でもない短歌を作ったりもする。酒と女とにかけては人後に落ちない。ドン・ファンをもってみずから任じている。

牧野は、今夜の宴席でも、

「玉井君、君も民政党に入ったがええばい。中立なんて、きれいごとをいうとったところで、いつまで経っても、うだつが上がりゃせんよ」

と、何回となく、くりかえした。

しかし、同じく、しきりに、民政党に入党を勧告する友田喜造とは、あまり肌合いが合わぬうえに、聯合組と共働組という、商売上のことでは、正面から対立している。同じ吉田一派、民政党内といっても、一色一様ではない。牧野藤三郎も、

「友田の金棒引き奴、人間の皮かぶった畜生じゃ。胃潰瘍ちゅうことじゃが、早く、くたばりやがりゃええのに」