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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
と、呼びとめた。そして、部下たちに命令を降した。
「これから先の見せしめに、ちいと、痛い目にあわせちょけ」
その言葉で、腕のむずむずしていた無頼漢たちは、勝則に殴りかかって来た。
逃げようとしたが、組みつかれた。その男を投げたおすと、はげしく棒切で脛を払われた。足が折れたようだった。たおれた。敵は馬乗りになって、乱打しようとする。渾身の力をふるって、はね起きると、相手を前後左右に投げ飛ばした。しかし、うすい光の中に、短い白刃が何本もきらめくのを見たと思った瞬間、左股に、熱い火のようなはげしい疼痛を感じた。
「殺すな」
と、誰かの声がした。
同時に、暴漢たちは、明かりのない劇場裏の奥へ、一散に消えた。
地面に膝をつき、歯を食いしばっている勝則の耳に、舞台から流れて来る三味と鼓の音が、夢幻の世界からの音楽のように、遠く聞かれた。
マンは、日若座を出た。
「温習会」を、聯合組が、家族同伴で総見するというので、金五郎にすすめられるまま、見物に来たのであるが、「清元・夕立」の幕が閉まると、俄かにこれ以上、観る興味をうしなった。あとで考えてみると、それとはっきり意識しなかったけれども、光丸の踊りが、というより、踊る光丸が見たかったのかも知れない。