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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

花やかで美しかった温習会は、こういう凄惨な結末をもって、幕を閉じた。それにもかかわらず、事件はきわめて不明朗な形で、有耶無耶に葬り去られようとしていた。新之助が、吊り道具を切り落した下手人と睨んだ「作やん」は、当夜から、行方が知れない。しかしその敵の廻し者も、火災をおこすまでの考えはなかったのかも知れなかった。鬼火を捨てた黒子は、新之助が可愛がっていた正直者である。裏手から新しく出た火の手は、放火にちがいないと思う。といっても、証拠はなかった。勝則を呼びだして威嚇したとき、辻木要之助が投げすてた煙草の火が原因らしいけれども、誰一人、そんなことに気づく者はなかった。

「警察は、なにをしちょるか。こんなことじゃあ、まるで、無警察と同じじゃないか。吉田一派の御用警察なのか?」

新之助が、いくら、ばりばり歯噛みして、口惜しがってみても、結局は泣き寝入りになるのが落ちのようだった。

翌朝、原田雲井が玉井家を訪れて来た。

「ノロ甚」の豆腐屋の前で、勝則に逢った。いつもの半纏姿であるが、太い樫の木の杖をついて、ひどい跛をひいている。

「どげんしなさったとな?」

原田は、おどろいた顔で訊ねた。