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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「へえ」大男は、帳面をひろげた。「ええか。……大石良造、堀部安太郎、小山田庄三郎、大原源吾、谷口林助、森新之助、玉井金五郎、……女では、丹羽フミエ、石川タツ、谷口マン、井上トモ子、……」
指名が終ると、一座は、ひとしきり、ざわついた。しかし、この人選は、個人の意志や、意見などは、はじめから、無視された。命令的なものであって、派遣に決定した者のなかから、不服をとなえることは許されなかった。
選に洩れた者のなかで、
「大将、わたしも、ぜひ、仲間に入れて下さい」
と、志願する男があった。
「駄目、駄目」と、大男の巨漢が、どなりつけた。「お前のような飲んだくれで、喧嘩ばかりは強くても、怠け者は資格がない。久松が入ると、仕事の段取りが狂うてしまう」
それから、浜尾市造の方をむいて、
「親分、どうやら、かたづきましたようで……」
「よし」
浜尾は、満足げに、うなずき、
「それでは、みんな、頼んだぞ。こういうときに、日ごろの恩をかえすのが、人間というものじゃ。明日が早いから、今夜は夜ふかしをしてはいかん。酒も、バクチも、やめて、早く寝れ。女買いにも行くな。あれが、一番、翌日の仕事にこたえる」