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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

光丸だけが残っている。

(妙な具合になって来たわい)

しかし、こうなったら、成行に委せるほかはない。金五郎は糞度胸をきめた。すると、かえって、落ちついて来て、その後は、演説ぶりが調子よく、いつになく上出来で、

「……来る三十一日の投票日には、みなさんの貴重な一票を、ぜひとも、正義の党たる中立聯盟の同志に、御投与下さいますよう、お願い申します」

と、結ぶことが出来た。

拍手を浴びて、控室に帰って来ると、原田雲井が、

「どげんしなさったな? 出だしと結びとが、大層なこと差があったが。前半は丙で、後半は甲ノ上たい」

そんなことをいって、笑った。

(勝則も、演壇から、光丸の顔を見たら、おれのように、とちるかも知れん)

卓のうえに原稿をのせて、目読している息子を見て、金五郎は、意地のわるいことを考えていた。

中村勉が、演壇に、出て行った。築港会社の社員で、二十七歳。角ばった精悍な顔に、はちきれそうな闘志をみなぎらせている。

控室の裏手の入口から、セルの着流しの男が、ぶらりと入って来た。

「オヤジ、お疲れさん」

「こりゃあ、時やん、若松に来とったな?」

「二三日前から。