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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

その艶な姿が、若々しく、美しい。マンは、狐につままれたような気持だった。

(こんなに、若いはずはないが、……)

お京の手紙には、二十五年前のことが書かれてあったのに、眼前の女は、どう見ても、まだ、二十歳をいくつか過ぎたばかりとしか思われない。いくら年をとらないといっても、不老長寿の魔法を知らぬかぎり、あり得ぬことである。

(人ちがいやわ)

一度はそう思って、がっかりした。が、思いきって、声をかけてみた。

「もしもし」

「あたしですの?」

と、女はふりむいた。

「東京から、おいでになった方ですね?」

「あい」

「お京さん?」

女は、ちょっと、ためらう表情を示したが、臆せず、妖しい微笑を浮かべて、

「そうです」

「あたし、玉井マンです。ちょっと、あなたに、――」

演壇では、金五郎が、とんちんかんなことばかりいって、笑われている。しきりに、汗をふいたり、やたらに、水を飲んだりしている。

「外に出るんですの?」

「そこまで」

そうして、二人は演説会場を出たのであった。

出るとき、女はすこし離れたところにいた光丸に、眼でさよならをした。二人は「夕立」をいっしょに踊った仲で、それ以来、急速に、親しくなっているようだった。