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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

そして、田舎の素人衆を相手に、イカサマをやって、お金を巻きあげていたのです。母は、「蝶々牡丹のお京」などと呼ばれて、命がけの鉄火の世界で、姐御分として通るようになっていたそうですから、腕も、度胸も、男まさりだったのでしょう。その母に、いつも、くっついていたのが、般若の五郎という三ン下、さっきの鳥打帽の男、唐獅子の十郎さんの親父です」

「うちの人と、はじめは、どこで逢うたとか知らん?」

「道後の温泉です」

「いつごろ?」

「そうですね」と、お葉は、両手の花車な指を、一本ずつ折って、「二十七八年も昔、明治でいったら、三十五年の秋になります」

「明治三十五年? まちがいありませんか」

「まちがいありません。母のことは、あたしのこと――いえ、自分のことよりも、はっきり、憶えていますわ」

「すると」マンは、胸がどきついて、「わたしと夫婦になる前、いや、知りあう前に、お京さんとはもう逢うとったわけね」

「そうです。そのとき、はじめて、母は、玉井さんを知ったのです。でも、そのときは、湯ノ町の賭場に、まだ若かった玉井さんが、般若の五郎さんに誘われて、気まぐれに顔を出しなさっただけの話。