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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
その次が、原田雲井で、四八票。中村勉、六三票。玉井金五郎、九九票。井上安五郎、一〇一票。
渋い顔で、ずらりと眺めまわした原田は、かたわらの机にいる大川時次郎に、
「全部で、どのくらい票が出ましたとな?」
と、訊いた。
時次郎も、泣きそうな顔をしている。わざわざ、直方の炭坑から、応援にかけつけて来たのに、努力の甲斐もなかったのである。原田にたずねられ、机のうえの紙片をパラパラめくって、面倒くさそうに、
「六千九百三十……、大体、七千票でしょうかなあ」
「フム、そうすりゃあ、もう、後は、千票あまりしか残っとらん勘定じゃが、……」
望みがない。惨敗――原田は、眼を怒らして、歯がみした。
隣室で、「六ゾロ」の源十が、なにかの広い紙を、力まかせに、ベリベリと引き裂いている。
「当選御礼」の張り札だ。開票がはじまったころ、市中に張りだすため、二十枚ほども書いたのだった。
原田は、ぐったりとなったように、腰を落した。
「原田君、いっちょ、行こか?」
と、金五郎が笑いながらいった。
「碁な?」
「うん」
「よし、やろ」
やけ糞のように、原田は叫んだ。
二人は、碁を打ちはじめた。