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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
「ほら、ワッショイ、ワッショイ」
「ドンドン、ガンガン、ドンドン、ガンガン」
「練りだせ、引っくりかえせ」
無茶苦茶に走る。町幅一杯、くねくねと曲る。くるくる回転する。前後左右にはげしくゆすぶり、はては、横だおしにしてしまう。転覆した山車の中でも、鉦太鼓はやまない。引き起すと、さらに、景気よく、ワァーッと、走りだす。
夜の山笠には、勝則の姿があった。
中川通りを練っているとき、中山が叫んだ。
「若オヤジ、七区の山笠が、突っかけて来ましたばい」
夜は、金五郎はいなかった。八幡製鉄所に、近く、アメリカから、莫大な数量の屑鉄を積んだ巨船が数隻、入港する。その荷役のことで、谷俊次を入れて、会社側と打ちあわせをするため、八幡に行って、留守だった。
東京から帰った勝則は、みんなと同じ、白黒横縞の祭衣を着て、父のかわりに、山笠についていた。手には、十二区の提灯を持っていた。
中山の声を聞いて、指さす方角を見た。
天鈿女命が、岩戸の前で、踊っている。鶏が大きく口をひらいて、鳴いている。手力男命が、岩に手をかけて開いたところに、天照大神の美しい顔が見える。張りめぐらされたしめ縄に、御幣がたくさん垂らしてある――その山笠が、ゆさゆさ、はげしく揺れながら、恐しい勢で、こちらの山笠に近づいて来た。