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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

友田の思う壺じゃろうけなあ」

「友田の鬼奴」

マンは、そこに友田喜造がいるかのように、口惜しがった。

六月十六日になって、金五郎は、日記に、

「今日モ駄目、炭商組合トノ交渉ハ無要、敵ハ友田、友田サエ居ラナケレバ」

そう書いて、妖しく、団栗眼を、ギラギラ、光らせた。

六月十八日、一つの事件が起った。

「若松港沖仲仕労働組合」の名で、東京から、劇団「左翼劇場」がよばれた。公演は六月十九日夜、六時半、会場は旭座、ということが決定された。なお、劇団は、小倉、八幡、門司、等で、公演する予定だった。だしものは、「太陽のない街」(四幕寸場)、「プロ裁判」(一幕)の二つ。労働組合では、特に、ガリ版で、「組合ニュース号外」を印刷した。劇団について解説し、「一人のこらず、働く者のための演劇を見に行け」と書いた。料金は、一般が、一等一円五十銭、二等一円、三等六十銭であったが、組合では、三十銭の「労働者券」を発行した。

金五郎が、笑って、

「おれも仲仕じゃけ、三十銭で、ええじゃろ?」

勝則にそういって、マンと二人で、当日を楽しみにしていた。

勝則夫婦は、前年末、山手通りの新居から、正保寺町の家に帰って、両親と同居していた。