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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

明日、やるなら、やれ」

吃りながら、そういい捨てると、立ちあがった。ふるえる手で、カンカン帽を頭にのせ、歩調をとるようにして、出て行った。

勝則は、自転車に乗って、海岸通りの「争議本部」に走った。父に報告しておこうと思ったのである。しかし、金五郎はいなかった。

「今日は、市会の方ですよ」

聯合組小頭の三崎清次郎が、そういった。三崎に概略を話しておいて、また、玉田美粧院に帰った。

午後五時から、老松町にある会館「昭和クラブ」で、座談会が開かれることになっていた。ところが、定刻すこし前から、会場の周囲を、怪しい人物たちが徘徊しはじめた。いずれも、遊人体で、時間とともに、人数が増える。懐中に、匕首か、日本刀かを隠してでもいるように、妙な恰好をしている。この状況が、「玉田美粧院」へ報告されて来たので、座談会は中止した方がよい、ということになった。二階に集合して、これから出かけようとしていた俳優たちは、行くことを止めた。河原重巳や、中村勉たちも来ていた。

すると、日が落ちて、すこし表が暗くなって来たころ、にわかに、美粧院の前が騒然として来た。

「座談会は、どこじゃ?」