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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

額と、首筋のところを血が流れていた。警察に、電話をかけた。なかなか出なかった。やっと、通じた。

「そうですか。すぐに、行きます」

その返事があったのに、警官隊は、長い時間、やって来なかった。ようやく、十人ほど、来たときには、暴漢たちは逃げ去った後だった。

「お前等、いかんじゃないか」

まるで、遊びごとのような叱言をいいながら、お座なりのように、二三人、検束して行った。

警察で、暴力団は、非常な優遇をうけた。豚箱ではない畳敷の道場のまんなかに、蒲団を敷いて寝た。にぎりずしやら、饅頭、煙草、酒などの豪勢な差入れがあった。

しかし、栗田銀五の一の子分、加賀新七は不服である。小柄ではあるが、全身、胆ッ玉といわれている、剽軽で、面白いところのあるこの博徒は、口を尖らして、署長にいった。

「警察から頼まれたけ、やったとに、どうして検束するとですかい?」

「いや、外聞があるんでなあ。まあ、お客さんとして歓待するから、そういうな」

後になって、明瞭になったことであるが、すべては計画的なのであった。……

吉田磯吉の方から、警察署長にたいして、「ああいう芝居を、なぜ、やらせるか」