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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

子供たちは鍋をつつき、酒を飲む者は盃をやりとりした。

「よし、お父さんが、いっちょ、ゴンゾ踊りを見せてやろ。昔、ここに居るババンの永田組で、お母さんと二人で、ゴンゾして、働いちょったんじゃ。……お母さん、歌えよ」

「なにを歌うの?」

「わかっちょるじゃないか。ゴンゾ歌よ、文句はどれでもええ」

いくらか赤くなった金五郎は、立ちあがった。浴衣の諸肌をぬいだ。彫青の見えないように、長袖のシャツを着ている。

マンは、すでに、ただならぬ夫の気配を感づいていた。

(なにか、大変なことを考えとるのにちがわんわ)

それがなんであるかは、明確に知ることが出来なかったけれども、けたたましい金五郎のおどけ振りに、マンは、異様な不安と、胸騒ぎとを覚えた。こんなに楽しいわけがないのである。争議の経過は、金五郎の意に反することばかりの続出で、最近は、一日として、明かるい顔をしたことがない。特に、この数日、怠業の失敗のために、土壇場に近い苦境に立っている筈だ。それをよく知っているマンには、今夜の唐突な金五郎のはしゃぎようが、恐しいのであった。

(なんのお芝居をしとるのじゃろうか?)

苦しくなると、芝居をする夫であるが、今夜の演技の意味は、マンには理解出来なかった。