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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
ええな?」
「承知しました」
八時すこし前、金五郎は、「小頭組合」の半纏を着て、家を出た。
今日も暑そうな上天気らしい。すでに、入道雲が純白の頭だけを、高塔山の背後にのぞかせている。しかし、朝のうちはひいやりとした。いつ見ても、軍艦が山上に乗りあげたように見える頂上の松林に、強い風があたって、波の音のように鳴っている。
正保寺町から、旭小路に出て、安養寺に寄った。鐘楼の横の大銀杏が、風にざわめいているほか、境内は静かである。墓地に行った。盂蘭盆会の名残りの提灯や、お供え物が、方々の墓に、いくつも残っている。「玉井家累代之墓」と彫られた、花崗岩の墓標の前に立った。合掌した。
(おれも、やがては、骨になって、ここに入るのじゃが、……)
すでに、葬られている子供たち――夭折した国子、一枝、死産児、などのことを考えた。
背後で、下駄の音がした。
「玉井さんじゃないですな」
と、声をかけられた。
長身の住職が、数珠を手に、にこにこと、立っている。
「これは、方丈さん、お早ようございます」
「早いお詣りですな。なんごとです?」
「いえ、別に、……」といったが、和尚がなんのために出て来たかに気づいて、「方丈さん、鐘つきですか」