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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
背に射ちこまれた弾丸を摘出するのである。
玄関から、五六人の抜刀隊が、雪の土足で、踏みこんで来た。白鉢巻組である。
「こら、医者、森新之助を出せ。ここへ、先刻、かつぎこんで来た筈じゃ」
「出しません」
「あいつは島崎勇次の兄弟分じゃけ、かたづけてしまわにゃならん。折角、死にかかっとるとを、助けるこたならんど」
「助けます。わたしは、どっちがよいか悪いかは知らない。しかし、人命を守るのが医者の使命です。患者を見殺しにすることは出来ません」
「そんなこというと、貴様の命もねえど」
「自分が殺されても、患者は救わねばなりません」
手術室を探していたがわからずに、抜刀隊は出て行った。
大喧嘩がはじまった情報は、たちまち、狭い若松の街中に伝わった。
風邪気味のマンは、家に引きこもり、炬燵に入って、猫のノミをとってやっていた。寝こむほどではないけれども、すこし熱もあるので、招待されていた日若座のこけら落しも、夫の晴れの舞台姿も、見に行くことを遠慮していたのである。
四五匹の猫が、咽喉仏をゴロゴロ鳴らして、あたたかそうに、蒲団のうえで、眠っている。ノミをとって貰っている三毛猫も、気持よさそうにしていて、眼をあけない。