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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

多くの政府要人が襲撃された。大雪であった。首都には戒厳令が布かれたが、恐しいなにごとかの兆が、この事件によって、国民を不安にした。

昭和十二年七月七日、日華事変勃発。

このときから、時代はまったく新しい歴史をくりひろげるのである。そのなかに、どんな夢が生まれるか、また、崩れるか、そんなことは、無論、わからない。

玉井金五郎、五十八歳。

玉井マン、五十四歳。

あとがき

『花と龍』は、読売新聞に、昨年六月二十日から今年五月十一日まで、三百二十四回連載された小説である。

私はその最終回の最後の行をかいて、ペンを置いたとき、不覚の涙を落した。終戦後、小説を書き終って涙が出たのは、この『花と龍』と、『青春と泥濘』との二つだけだ。その涙の意味はちがうけれども、どうしても書かなければならなかったものを、やっと書くことが出来たという、よろこびともつかず、悲しさともつかず、さびしさをもまじえたような或る感情が、生来だらしのない泣き虫の私を泣かせるのである。無論、この作品は不備や不満だらけであるが、この後、人から君の代表作はと訊ねられたとき、その一つにこの作品をあげることの出来るのは作家としての本懐である。