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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

君もまさか詐欺で喰い込もうとは思わなかったろう。今度は恐喝よりはちっとばかり手強いぜ。なア、幸田君。なぜわれわれが解散させずに見ていたか知ってるかね。要するに君のペテンに乗らないためサ。君の詐欺の実証を握るためサ。あの噴水を調べて見れァどんなカラクリを仕込んだかすぐ判る。今度こそ否応なしだ」

幸田は、あはは、と笑って、

「その通り。詐欺か詐欺でないか、調べればすぐ判る。そんな事でこの幸田を凹まそうとしたッてそれぁ無理だァ。……ねえ、局長。それァそうと、ここにこんなものがあるんだがねえ」

といながら鉛筆で走り書をした七八枚のザラ紙の束をテーブルの上へ投げ出した。局長はハット顔色を変えて、それを手に取って読みかけるのを幸田は尻眼にかけ、

「松谷鶴子と安南王の馴染めから、皇帝の殺しの件、警視庁が有明荘の止宿人を便宜拘束した条まで精しく書いてある」

局長は顔を紫色に黝ませ、大喝一声、

「幸田、貴様、俺を強請る気か!」

幸田は手を伸してテーブルの上の原稿をさらえ込み、

「局長、それァすこし口が過ぎるだろう。幸田節三これでも日本人だァ、この一件をスッパ抜いて日本のためになるかならねえかぐらいのこたァちゃんと心得ている。