轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

……では目立たぬように持って来て取調べて見ましょう。何といってもその方が手ッ取り早いから」

局長は脅えたような眼をして、

「待ってくれたまえ。もし、高貴な方ででもあったらどうする。この上めんどうを起すのはかんべんしてくれ」

林は二人の会議もオチオチ耳に入らぬような不安な面持で、

「局長、そんな青二才のことはどうだっていい。それより皇帝はどうなったんだろう、皇帝は。まさか何か」

局長は手を振り、

「林君、詰らん事をいい出してくれるナ。しかし、万一そんな事があったら一大事だ」

と総監に向い、

「君、ホテルに電話を掛けて、皇帝は前日まで確かにホテルにおられたか聞合わしてくれたまえ」

早速ホテルに電話を掛けて見ると、皇帝は、前日すなわち十二月卅一日午後七時ごろ夕食を摂られ、九時過ぎに、御外出になったという返事。皇帝の立寄られそうなところへ落ちなく電話を掛けさせたが、どこからも色よい返事はなかった。そのうちに林は局長に意を含められて幸田の家へ出掛けて行く。あとには局長と総監が顔を見合わしては、弱った弱ったを繰返すばかり。智慧のない話のようだが、加十の身分が判らないのだから迂濶に手が出せぬ。