轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

……然し、まアそれだけのとッかかりがあれば話の糸口だけはつく。私はこれから向うへ出掛けて行って穏当に掛け合い、向うの言い分もとっくりと聞いて、何とかして王様だけは貰って来ましょう。……老人の冷水だと思いなさるかも知れないが、私に少し存じよりがあるから」

といって立上る。

幸田が出鱈目な当推量を口走ったばっかりに、とうとうこんな事になってしまった。一体この治まりはどうなるか。それは却説、ほどなく道灌山の自動車は「住吉」の門を走り出て、芝の方角へ。

それとちょうど堀一つ隔てた向い側、暁橋の袂。「呉竹」という奥深そうな家を先ほどからしきりに見張っている一人の人物がある。年のころは卅七八、西洋臭い口髯がよく似合い、鼻の高い、少し眼の窪んだ、一目でそれと判る混血面。第三回、ロード・スタアで「巴里」へ乗りつけて来た、有明荘の住人の一人、仏国「ホヴァス」通信社の通信員ジョン・ハッチソンである。

門松はサラサラ、追羽根はカッチンカッチン、いかにも正月らしい長閑な夕暮。粋な座敷着もちらほら通る。その片側塀の闇に踞んで、凄い眼ざしで「呉竹」の方を眺めているが、待ち切れない風で、ツと出て行っては門の奥を覗き込む。