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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

煩悶するなら事件が片附いてからゆっくりやって貰いたいと歯痒がるは恐らく作者だけではあるまい。

やがて、時計が五時半をうつ。すると、ちょうどそれが合図のように例の四銃士が入って来て、直立不動の姿勢で扉口の前に整列する。

ようやく真名古が身動きし出した。ゆっくりとその方へ振向くと右端の銃士にめくばせをする。合図された男は一歩出ると、簡単明瞭な口調で、

「有明荘の居住者、岩井通保、印東忠介、ジョン・ハッチソン、山木元古、村雲笑子、川俣踏絵の六名は「カーマス・ショオ」の六名と共に三台の自動車に分乗し、三時十分に「巴里」を出発し、同三時廿分に築地小田原町の待合「すず本」に到着しております。十二名が到着すると同時に「すず本」は玄関を鎖し、臨検の五時廿分まで一度も開きませんでした。「カーマス・ショオ」の六名を取調べましたが、有明荘の六名は臨検の時間まで一人も外出しなかったと申立てております。「すず本」の裏木戸を調査しましたが、最近人の出入した形跡は絶対に認められませんでした」

真名古は二番目の銃士に合図をする。第二の男は進み出て、

「慰労巡察の警視総監が赤坂区第五歳晩警戒哨、溜池交叉点を通過になった時間は午前三時五十分であります。