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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
返され、鶴見組をお構いになってしまった。
安亀が賭場を預っていた頃は、この賭場はあまり成績のいい方ではなかった。ドブ賽や験示を使うという評判が立って、バッタリと淋れてしまった。
「ドブ」ともいい、六方、「臼」ともいうこの不正賽はどんなものかというと、これは賽の中に金粉をいれて作ったもので、これを壺皿にいれると居据ったまま転がらない。伏せると壺皿に入れた時出ていた裏目が出る。「両通」といって、これのもすこし精巧な奴になると、金粉の重味が両方にかかるような仕掛になっていて、賽の粉を下の方へ通して伏せると、五三一の半目が出、上に向けて振り動かして伏せると、二四六の丁目が出る。
思わず碌でもない事を叙述してしまったが、これは又聞きであって、もとより作者の実験による事ではない。この辺はとくと御諒承願う事として、安亀が盃を返されたのは、多分この辺の事情によるのだろうと察しられる。
有明荘三人の住人、岩井保通と川俣踏絵がこの賭場にいるのは、最近世界の打撃王といわれるルーブ・ベースが日本へやって来たにつき、その歓迎賭博会を催す事になって、この二人が発起人に名を列ねているからによる。