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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

それにしても、紙がひとりで畳の裏へ滑り込むはずはないから、それを敷き込むとすれば、どうしたって畳を持ち上げなければならない理窟になる。あの華奢な花子が、自分の手で畳を持ち上げたりなんかするところをみると、花子にとって、これは何かよほど大切な紙切れだと思われる。……縁をさすって、ずっと見てゆくと、なるほど畳の裏藁があっちにもこっちにもはみ出し、おまけに黒縁の上にもあちこちに藁屑がのったままになっているから、昨夜か今朝、出がけに畳を上げたのに相違ないんだな。……火箸でこじ上げるんだとみえて、三つ角になった黒縁の角が、その場所だけひどく弱っている。……一度や二度じゃない、しょっちゅう畳を起したり敷いたりしているってことがよく判るんだ。……一体、この紙きれは何なのだろうと思って、火箸で畳をこじ上げて、その紙を引き出して見たら、……さすがのわちきも、ゾッと冷水を浴びたようになって、あまり凄くて思わず、わッと声を出した」

脅えたような目付をして、

「……一体、何が書いてあったと思う」

「何が書いてあったというんだ」

踏絵は声まで慄わせて、

「それが……、「五人坊主」