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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
の呪咀絵なんだ。……知ってるだろう、吉原の花魁などが人を呪い殺そうとするときに使うあの「五人坊主」の絵なんだ。……まん中に呪い殺したい奴の人形を書き、右左から牛頭、馬頭と二人の亡者に両手を引かせた絵をかく。丑の刻に座敷の丑寅に坐って、線香の火で、目、口、鼻、四肢、腹、心臓という具合に、毎日一カ所ずつ焼穴をあけてゆく。……二十一日で満願になるんだあ」
岩井もさすがにぞっくりと冷気だった面持で、
「嫌な話だなあ、すると……」
踏絵はうなずいて、
「ああ、そうなのさ、……人形の胸んところ、「松谷鶴子、二十三、卯年の女」と書いてあった」
岩井は息をひいて、
「虫も殺さないような、あんな綺麗な顔をして、……凄いもんだなあ。……そうきけば、いじらしくもある。よくよく王様を思いつめていたんだな。……それにしても古風なことをするじゃないか。どこからそんなことを教わって来やがったんだろう。まさか、お前が教えたんじゃあるまいな」
「馬鹿。……花子の母親ってのは吉原の遣手で、十二三の頃まで花も廓で育ったんだというから、きっと花魁にでも教わったのさ。あの、……娘のやりそうなこったね、ふだんでも顳に蒼い筋を浮き上らせて、何だか気狂いじみた目つきをしている。