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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
どうもその辺のことははッきり申し上げかねるのであります、というたよりない返事だった。
精しくやるとキリがないから、これはこのくらいにして置こう。それが真実だとすれば、ほぼ真名古の推察と符合するのである。
日比谷署を出ると、真名古は霞門から日比谷公園の中へ入って行く。
折から雲を破ってあらわれた眉のような新月。その淡い光が公園の小径を照らす。夜は深沈と更けわたり、四辺闃として、聞こゆるものは松吹く風の音ばかり。
真名古は痩せた肩を突兀と聳かしながら、藤棚の下を通り抜けて池の汀までやって来た。四阿の傍えには一基のアーク燈。人影なき地畔を照らして徒らに煌々。
真名古は凝然と腕組をしながら、瞬きもせずに噴水の鶴を眺めはじめる。あたかもその位置は、今朝真名古が佇んでいたその位置である。
嵯峨たる老松は水の上に腕を差し伸し、噴水の鶴はちょうどその枝の上に乗っているように見える。嘴から流れ落ちる水滴にアーク燈の光が反射して、風で絶えず羽毛をそよがしているような、妙に生き生きとした印象を与える。ああ、今にも飛び立つか、青銅の鶴は濶達な翼を張って夢見るように空を仰いでいる。