轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
「では、そろそろ配置につくとしようか。手筈した通り、食堂のあの長椅子のうしろへ行こう。あそこからなら台所の中の手細工をひと眼で見通すことが出来るだろう」
四つの影は縦列をつくって、そろそろと食堂の中へ入って行って、勝手の扉と向き合う大きな長椅子の後にひと塊りになる。
「料理場の扉の外は大丈夫だろうナ」
「今朝からずッと楠田が張込んでおります」
「よろしい。ここへ入って来たら、もう袋の鼠だ。どんなことがあったって逃すようなことはない。……あいつを引ッ括って諸君に引渡せば、それでこの俺はお役ずみになる。諸君ともこれでお別れになるのだが、これが最後だと思って、もうしばらくの間辛抱して貰おうか」
「課長!」
「そんな湿った声を出すな。一体何をいい出す気だ。感慨めかしいことなら聞く必要がない。だいいち、そういう呼び方だってもうこの俺にはふさわしくないのだ。……要するに俺は屈辱に耐えられぬ人間なんだ。そういう偏狭な性情がこんな愚かな真似をさせる。取るにも足らぬ小さな事務から疎外されたというだけで、何も辞職までしなくともいいと諸君はそういいたいのだろう。しかし、諸君の感想に拘らず、俺にはこういう処置がたいへんに気に入っているのだ。