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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

まさに晴天の霹靂といった工合。冷静の象徴のような真名古を、何がこれほどまでに激発させたのか。総監はもとより、四銃士の面々も呆気にとられて、唖然と真名古の面を見戍るばかり。

総監はマジマジと真名古の顔をふり仰いでいたが、むしろ宥めるような口調で、

「おい真名古君、どうしたんだ」

というと、真名古は今度は度を失ったようにあわてて眼を外らしながら、

「別にどうしもしません」

と、あるかなきかの声で呟くと、幽鬼のような蒼ざめた頬をサッと紅潮させ、さながら処女のごとくにさしうつむいてしまった。

しかし、それも一瞬ほどの間で、まもなく依然たる狷介な面持にかえると、

「要するに、しちくどくいい廻す必要はありません。二人の総監のうち、有明荘へ現われたのは決して岩井ではなかった。なぜというに身長を除くほか、岩井は犯人の特徴に少しの類似性も持っていないからです。曲った背中も持っていなければ、毬栗頭でなんぞありはしない。手入れの届いた美しい髪をもっています。……どうです、総監、これでもまだ抗弁の余地がおありになるのですか」

いよいよもってドタン場に押しつめられたと思うのに、総監は屈する模様もなく、