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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

三

「やるなッ――」

と、吉岡方の中から一人が叫んだようであった。

すると、声に合せて、

「やるなっ」

「やるな!」

同じ言葉を投げながら、どやどやと彼の後ろから前の方へと八、九名の影が駈け廻り、

「――武蔵待てッ」

と、ここに初めて、正面から激突をあげてきた。

――と、武蔵は、

「何かっ?」

と相手の耳へ不意と感じるような強さで答え、その答えとともに身を横へずっと退いて、道ばたの小屋を背にして突っ立った。

小屋の横に、巨きな材木が枕木に横たわっているし、辺りに大鋸屑が積もっているなどから見ても、これは木挽職人の寝小屋らしかった。

物音に、

「喧嘩か」

と、中から戸を開けかけた木挽の男は、外の景色をひと目見ると、

「わっ」

あわてて戸を閉め、内側に心張り棒をかって、それなり布団でもかぶってしまったのか、しいんとして、中に人がいるとも思わせない。

吉岡方のものは、野犬が野犬を募るように、指笛を鳴らしたり、呼号をあげたりして、見る間にここへわらわらと集まって来た。こういう折の人数は、二十人が四十人にも、四十人が七十人にも、多く見えるものであるが、正確にかぞえても、三十人以下ではなかった。