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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

心なしか、こよいは、灯も鮮やかに、翳りなく点って、なんとなく胸も花やぐようなと、灯占をたてていたが――

花田橋では

お許に待たせたが、

こたびは

わしが待つであろう

瀬田の湖畔に

牛をつないで

と、武蔵からの便り。まざまざと、その人の筆、墨のにおい。

墨の光までが、虹いろに見え、彼女のまつ毛には、きらきらと、珠の涙が咲いていた。

――夢かと思う。

あまりの欣しさに、頭も茫として。――お通は、なんだか、この世のことでないような心地がしてならなかった。

安禄山の叛乱に、兵車の軌のもとに楊貴妃を失った漢皇が、のち貴妃を恋うのあまり、道士に命じて、魂魄をたずねさせ、道士はそれを、上は碧落の極み、下は黄泉にいたるまでさがしもとめ、遂に、海上の蓬莱宮中にその花貌雪膚の仙子を見出して、帝の意をつたえたというあの長恨歌の中にある、貴妃の驚愕と喜びの章が――そのまま自分のことでもあるように、お通は茫然として、短い手紙を、見も飽かず、繰りかえしていた。

「……待つ身となると、待つ間の時の長さ。そうだ、少しでも早くお目にかかって」

こう、城太郎へ向って、語りかけているつもりではあったのだが、もう彼女の歓びは彼女を顛倒させている。