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むじんとうにいきるじゅうろくにん

無人島に生きる十六人

須川 邦彦

線上閱讀須川 邦彦《無人島に生きる十六人(むじんとうにいきるじゅうろくにん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 100,616 字 · 201 頁

青空文庫

船だ

それを一目見て、

「気がちがったっ」

ぎょっとしたみんなは、その場に、立ちすくんでしまった。

船だ

川口が、気がちがったようにつき出したうでにみちびかれて、沖に目をうつすと、はるか水平線のあなたに、とても小さいが、くっきりと、スクーナー型帆船の帆が見えるではないか。

「あっ」

こんどは地上の十何人が、だれもかも、手にしたものをほうり出して、とびあがった。

「たいへんだっ、船だっ」

「それっ。信号だっ、火だっ」

「伝馬っ」

総員は、右に左に、それこそとびちがうように走って、非常配置の部署についた。それが、またたくまに、みごとにてきぱきと、日ごろの訓練どおりに、手順よく進行した。

三ヵ所から、みるみる黒煙がふきあがりはじめた。

私は、双眼鏡を首にかけながらなぎさに走って、伝馬船にとび乗ると、伝馬船当番の三人の水夫は、もう、櫓と櫂とをにぎっている。飲料水入りの石油缶をかついで、水夫長が乗りこむ。と私と水夫長と当番三人の、帽子と服とをひとまとめにしたつつみが、伝馬船に投げこまれる。数人が、伝馬船をなぎさからつき出す。

すると、櫓も櫂もぐっとしわって、伝馬船は、ぐんぐん沖にむかって進んでいた。