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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(二)八人芸の女
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(二)八人芸の女 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 144,562 characters · 291 screens
「あッ」
平次もガラッ八も、笹野新三郎も開いた口が塞がりません。
「確かに『千里の虎』と言ったか」
平次はわずかに平静を取戻します。
「言いましたよ、――銭形の親分に約束したが時刻もちょうど戌刻(八時)だ、――って」
若者の一人は米屋の丁稚でしょう。
「平次」
しばらく経って笹野新三郎は言い出しました。
「旦那、これは私の一代の失策かも知れません、――少し考えさせて下さい」
平次は打ち萎れて、番所の隅に腕を拱きます。
「見あがれ、真物の『千里の虎』が出て来たろう。サア、俺をどうしてくれるんだ、――無闇に人を縛りゃアがって、銭形の平次もねえものだ、畜生ッ」
竹の市は、事情を察して、口汚く罵り始めたのです。
「面目次第もありません、これは全く私の間違いでございました。竹の市の縄は解いてやって構いませんか」
「勝手にするがよかろう」
笹野新三郎の許しを受けると、平次は竹の市の後ろへ廻りました。縄を解いてやる積りだったのです。
「嫌だ、今さら縄なんか解いて貰いたくねえ。このままお白洲へ突き出してくれ。銭形平次を日本一の阿呆にしなきゃア、俺の腹の虫が納まらねえ」
竹の市は身体を揉んで解かせまいとします。