Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Read 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 173,309 characters · 352 screens
家庭にあっても、彼はむろんよい父であり、よい良人だった。行きとどいた調度や掃除にも、何不自由ない平和さがみえた。
が――ちらと不機嫌に、
「修蔵は、また、留守か」
食膳につくと、すぐ訊ねた。
お磯が、晩酌の一盞を酌しながら、
「書物を買いにといって出ましたが……」
「書物を。――書物など、読んだこともないに。――また、堺町の芝居町でもうろついているのじゃろう」
「いえ、このごろは、よく御教訓を守って、道場の方も、励んでおりまする」
「なんの、道場通いが、あてになろう。お前など、そんな浅はかゆえ、若い者の行状が分らんのだ。道場の門弟仲間と、悪所へ行くらしいという噂を聞いたぞ」
「まだ、江戸が珍しいのでございます。友達に強いられて、見物ぐらいには参ったかも知れませぬ」
「そう庇うからいかん」
伝右衛門は、苦りきった。
国許の親戚の眼がねで、この春、江戸へ上せてよこした若者だった。堀内家のあと目をつがせ、お麗に夫あわすに足る若者は、江戸の人間や都会の風に染まった在番にはないといって、剛健をもって誇る国許の熊本から選んだのである。二、三年ほど、手許において勉強させ、よかったら、決めようという相談の下に預かっていた。