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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Read 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 173,309 characters · 352 screens
五
五
右門は江戸で生れたので、家来の話に聞いただけであるが、この長兄の片目になった原因は、七歳か八歳頃の事、柳生城の藪で悪戯をしていて、殺ぎ竹で目を刺したのが因だということであった。その時、泣いて帰って来た十兵衛に、祖父の石舟斎が、
(侍の子が、殺ぎ竹で目を刺されたなどは、恥とこそ思え、泣くどころの沙汰か。わしの孫にも、こんな意気地なしが出来よったか)
叱られて、退くと、幼い十兵衛は、やがて自分の居間で、朱になって昏倒していた。家臣が驚いて抱き起してみると、殺ぎ竹で傷つけた眼を、自分の手で小柄で抉り抜いていたというのである。
――そういう気性を幼少から持っていた長兄である。右門は、一つ棟に住んでいるさえ、絶えず妙な威圧をうけた。同じ恐いにしても、父の但馬守には、愛が感じられるが、この長兄はただ恐ろしいだけだった。
「ああ、酔うたなあ。右門……鼓を取って来ぬか。おぬし、猿楽を舞え。……何、舞えん。然らば、鼓を打て、わしが舞うてみせる」
「兄上。こんな所へ、横におなり遊ばしては、体に毒でござります。莚も夜露に、じっとり湿っておりまする」
「樹下石上は、乞食と武芸者、どちらも馴れておらねばならぬ。