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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Read 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 173,309 characters · 352 screens

Aozora Bunko

敦盛

――いやいや、もう何もいうまい、即刻熊本へ帰れ」

「申しわけがございませぬ。まったく、同門のお友達と、近頃、酒をのみ覚えまして」

「いい訳がましいことを申すな。行けといったら、行けっ。――これお磯、笠と草鞋、それに路銀をつかわせ」

「あなた……」

「早くいたせっ」

「でも、あまりといえば」

「今宵ばかりは、庇いだて、一切ならぬ。わしは、苦々しい我慢をきょうまでしていたのだ。そちが出さねば、わし自身、笠、草鞋を背負わせて抓み出すぞッ」

いいすてると、伝右衛門は、風呂場で足を洗って、寝てしまった。

明くる日、出役の間際に、

「修蔵めは、出て失せたか」

「はい……。不愍ではございますが、仰せのよう……」

母と娘は、悄然と答えた。

敦盛

二月に入って、二日の晩だった。伝右衛門が、ちらと、用事に姿をみせると、上の間から、

「オオよい所へ。伝右どの、これへ」

珍しく、内蔵助が、呼ぶのである。それも、いつになく、ほがらかに。

見ると、酒が出ている。

甘党の赤埴源蔵、吉田忠左衛門、堀部老人、小野寺、間瀬の人々は甘みぞれを飲んでいた。無言居士の奥田孫太夫までが、今夜は、ひどくニコニコしているのだった。