Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Read 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 173,309 characters · 352 screens

Aozora Bunko

その貧しい郷士の子が、今の敦賀城の大谷刑部であった。珠のように端麗なお人であったと母からは聞いていたのに――今見れば、どうであろう、その面影もありはしない、気の弱い者がこの蚊うなりのする仄暗い書院の内で、一目そのお顔を不意に仰いだら、気を失ってしまうかも知れない。

刑部は、業病だった。もう十年余り前から、病兆が出て、今では一見してそれと分る癩の相好をしている。

髪は、禿げ上がり、顔は赤黒い無気味な照りを持って、腫れた唇のわきには、紫いろの斑痕が出来ていて、人の二倍もあるかのように全体が畸形に大きく膨れているのだ。――無論、睫毛も落ち、視力も、燈火がポッと見える程度で、眼の前、五、六尺のまわりしか見えないらしい。

「うむ……うむ……乳母がの……わしに」

こう幾度も頷いて、心なしかその睫毛のない眼をしばだたいて、刑部はお篠のことばを聞いていたが、やがて、庭の方へ向って丁寧に頭を下げ――

「かたじけないと云うてくれよ。麦菓子も早速食べよう、守護札も肌につけて戦に出よう」

と、云った。

近侍に、重箱をとらせ、すぐその麦菓子の一つをとって味わいながら、

「お篠とやら、そなたは、乳母の何人目の子じゃ」