Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Read 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 173,309 characters · 352 screens

Aozora Bunko

「働く処を得た」

と、おっしゃっていた通り、わしの御主人も、実によく職に尽されたが、信長公も実によく光秀様の才能を、薬籠中のものとして、お使いなされたものと思う。

誰にも疲れは来る――。

また、立身なされば、自然、立身した心にもなる。

ふと、その疲れを、亀山のお城に休めて、今と越し方を顧みれば、茫々十七年、髭にはもう白いものの交じる五十五歳の御自身を見出して、夢のようにも思われたであろう。

が、今は。

夢ではない。丹波一国を領して、身は亀山の城に君臨し、位階は従五位下、族を惟任と改め、日向守に任官なされて、天下の府、安土奉行衆の一席をも占めておられる。――まったく、何度も繰返すようだが、昔を思えば、夢のような御出世である。

おまえ見たかや

お城のにわに

今が桔梗の

さかり頃――

御城下の田や山で、この頃よくきく歌は、光秀様の善政を謳歌し、明智家の開運を祝ぐ声だった。実際、領内の御政治は、非難のしようもないほど、行届いて、平和に盈ちていた。

けれど、光秀様の顔いろには、お疲れが濃くなった。淋しい山陰の一本桔梗のように、いつも愁いに鬱いでいた。

――何事があったのだろう?