Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Read 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 173,309 characters · 352 screens
取次について、長い一間廊下を、書院まで通ると、
「おう、小網町の内儀か、めずらしいのう」
音声の高い――年五十がらみの面長で人品のいい老旗本が、正面の脇息からそういって、
「きょうは、社中が寄って、渫いやら、新曲の評をし合うているのじゃ。ゆるりと、遊んでゆけ」
「いつも、お弁当の御註文をいただきながら、店の者まかせに、御不沙汰ばかりを」
「ま。商売の話はよせ」
「ほんに、皆様も、お揃いのところで」
「弁政の夫婦は、金溜め屋じゃという評だぞ。お前も、社中になって、ちと、芸事にでも金を撒かんと、わしが、御用党になって押込むぞよ」
「ま、殿様、御冗戯ばかりを」
すると、旗本隠居の笹本金十郎を取り巻いて、ずらっと、書院いっぱいに居並んでいた男女が一斉に、手を打って、
「ようよう、お村さん、わちきなどもす、覆面して、当世流行りの押借りと出かけやすぜ。なあ、みんな」
「繰込もうじゃござんせんか、今夜あたり」
「この同勢で――」
と、一人が、俳優の声色もどきで、
「御時勢よそに不埒な金持、軍用金の調達申しつける、嫌と申さば――てな事で、一つ、畳へ刀を突き立てるんでげすな」
「ははは、その事その事」