Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Read 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 178,609 characters · 362 screens
長屋の人たちが、口もきかずに、出はいりする様子や、近所の囁きなどを不審そうに見廻しながら、お喜乃の家の門に立って、
「おやっ。何かあったんですか」
と、首を突っこんだ。
奥には、七、八人、長屋の者が集まって、畳を代えたり、仏事の道具をならべていた。
「あ、自雷也床の親方ですか」
「お喜乃さんは」
「おります」
「一体、どうしたんで」
そろそろと、上がり込みながら、
「じゃ、昨夜のうちに、御病人の容態でも変ったんですか」
「なに、それならまだ諦めようもございますが……」と、長屋の人々は、沈鬱に、ひとしく首を垂れて、
「可哀そうに、こんな家へ、泥棒がはいって、斬られなすったんでございます」
「えっ、親父さんが」
「はい」
「ほ、ほんとですか」
「お喜乃坊が、かあいそうでござんす。な、なんていう、運の悪い娘でしょう」
粛然として、みんな嗚咽した。――仁吉も、拳を膝に突っ張って、眼をしばたたきながら、
「そうですか――」と、息をふかくついて、「するってえと、ゆうべ、あっしが帰った後ですね」
「もう明け方に近かったそうです」
「ふてえやつだ。病人を斬り殺すなんて、憎んでも憎み足りねえ畜生だ。