Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Read 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 178,609 characters · 362 screens
吉良家の人々
一
どこの追分で、道をちがえたか、それとも、裏街道と、早まって、先へ追い越してしまったのか、縮布屋丈八は、とうとう、一角の姿を見出さなかった。
吉良家の人々
一
江戸らしい。どうしても。
あらゆる物証からも、六感からも、丈八はそう教えられて、日ごとに、江戸中を探していた。
初秋の二百十日過ぎ。――町には、祭りの提灯、花車、シャンギリの音が――そして空には赤とんぼが、江戸の秋を染めている澄んだ日だった。
「御用っ」
左衛門橋を、ばらばらっと人が――声が飛んでった。
砂利場の砂利に、腰を下ろして、
(銀六老人にも、あのまま、別れっ放しだが、お信は、守っていてくれてるだろうか。あの物堅い老人ゆえ、安心は安心だが)
と、すこし疲れた面もちに、考えていた縮布屋丈八は、
「何か?」
と、橋の跫音に、顔を上げた。
とたんに――一箇の物体が、視線をかすって、橋の袂から、河へ。――と思うと、どぼうんと、白い飛沫が、丈八の顔にまでかかった。
「石?」
と、丈八は、思ったが、橋の欄に、足をとめた町方や、捕手や、弥次馬の群れは、
「飛びこんだ、飛びこんだ」
「あの辺に――」
「水がうごいている」