Japanische Klassiker mit Furigana
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ロザリオのくさり
ロザリオの鎖
永井 隆
Lesen Sie ロザリオの鎖 (ロザリオのくさり) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.351 Zeichen · 213 Bildschirme
わがままとは高慢心の一つの現われ方である。私や婦長が山下の教育に特別力を入れているのは自分の学力が優れているので、なんとかして教室に役に立てさせようと思ってのことだ、それならなまけて、じらしてやれ、いっそのこと脱走して困らせてやれ、そんな子供っぽい意地悪からやったことだったらしい。ところが天草へ帰って二週間たっても三週間たっても教室から問い合わせにも迎えにも来なかった。あてははずれた。近所の人はひそひそと自分のことを話の種にしはじめた。山下は父に連れられて教室へ帰ったが、誰も自分がおらずに困ったとは言わなかった。そこではじめて山下は自分の価値を知ったのである。
それから後の教育は楽だった。もともと頭のいい子だったから成績はぐんぐん上がった。さらに山下の心を教室に結びつけたものは空襲であった。身辺に落下する爆弾や機銃弾の中で、教室員が心も体も互いにぴったりより添って活動した幾度かの生命がけの救護隊の体験は私と山下との間のわだかまりをすっかり忘れさせてしまった。港外で輸送船がやられた日、鉄かぶとをりりしくかぶり、大学救護隊の腕章もあざやかに、トラックにとび乗り海岸さして出動したときの山下の勇ましい顔が今も目に残っている。