Japanische Klassiker mit Furigana
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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
Lesen Sie 大岡越前 (おおおかえちぜん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 218.436 Zeichen · 437 Bildschirme
「……というわけさ。ひと頃は、おれもひそかに、一城一国を、夢みたが、自堕落のたたりで、世が腐るより先に、こっちの体が、喘息病みの、万年床に臥す身となってしまった。悪の生涯も、やって通って来てみれやあ、あぶくみたいな儚さだ。こんなことなら、達者のうちに、魂を入れかえて、善人になっておいた方が、まだ、往生際が楽だったのにと、後悔もされる。――人間、病んじまっちゃあ、金も色気も、あったものじゃねえ。おれも、あの世のお迎えが、遠くねえとみえるよ」
かつて、おくびにも吐かなかった過去の秘密をいってしまったせいか、刑部にしては、めずらしくも、ふと、あわれな人間的述懐をもらした。
「ええ、縁起でもねえ」
「鶴亀鶴亀。――つまらねえことを、親分ほどな悪党が」
と、三人は、手を振りあったが、悪党性の深い者ほど、実は、たえ間なき死に際のおもいに憑かれ、折あれば、あわれな人間本来の本音を聞いてもらいたいのであった。
「いやに今日は、湿ッぽく暮れてしまったぜ。景気直しに、一杯やろう」
たれか、出て行って、てん屋物を誂え、燈火をつけると、刑部の枕元で、酌み交わした。
酒をふくむと、すぐ咳になるので、刑部は、杯も、手にふれない。